DULL-COLORED POP『岸田國士戦争劇集』白組
@アトリエ春風舎
作:岸田國士
構成・演出:谷賢一
『動員挿話』『戦争指導者』『かへらじと』の三本立て
『動員挿話』戯曲初出:1927年
将校の軍馬を世話するという名目で一人の馬丁が戦争に召集されようとしており、それを止めようとする妻と馬丁の掛け合い。妻は「この人と二度と離れたくない」夫である馬丁は「妻のことは心配だが世間体に負けて戦争に行くことに決めてしまう」。男性と女性のすれ違いがとても切ない戯曲。
将校の妻と馬丁の妻の立場の差による行動原理の違いも面白いのだが、馬丁の妻を演じる女優さんの迫真の演技がそれをさらに引き立たせる。
『戦争指導者』戯曲初出:1943年
ルーズベルトとトルーマンが演じる短いコント。
1分ほどの短い戯曲だが、ぱっと場が明るくなる。
『かへらじと』戯曲初出:1943年
幼い頃に親友の眼を失明させてしまったいち兵隊、志木の戦死までの経緯を描く作品。『動員挿話』と相対して、とても静かにゆっくりと志木が戦地に赴くまでの苦悩や葛藤が、情感にあふれる演出をされているのが美しい。
親友が失明のために徴兵検査に落ちたことを自分の落ち度だと信じ、「2人分の働きをしなければならない」と将校の命令に背き戦地にて特攻を繰り返す志木の心情もとても苦しく響いてくる。
ー戦時には筆を折らなければ作家は戦争賛美のために動員されてしまうというツイートをどこかで読んだが、それでも岸田國士が戦時に残した戯曲のひとつひとつがとても美しいと思わされる公演であった。